「うちの柴犬、全然言うことを聞いてくれない…」「叱ると余計に距離ができる気がする…」。
そんなモヤモヤを感じている飼い主さんに向けて、柴犬の性格に合ったしつけの考え方と、今日から実践できる具体的なステップをまとめました。
このページでは、次のようなことが分かります。
- 柴犬ならではの性格をふまえた「伝わる」しつけの基本
- 最初にそろえたい道具・環境・家族ルールの整え方
- トイレ・呼び戻し・基本コマンドの教え方とコツ
- ついやりがちなNG行動と、その代わりにできる対処法
- 今日からすぐに始められる、しつけが楽になる習慣
完璧を目指す必要はありません。
「昨日より少しだけ分かり合えたかも」を積み重ねていくイメージで、気楽に読み進めてみてください。
柴犬のしつけを始める前に知っておきたいこと
柴犬のしつけで一番大切なのは、「犬種の特徴」と「その子の個性」を尊重しながら、生活ルールを一貫して伝えることです。
厳しく叱って言うことを聞かせるスタイルよりも、
落ち着いた態度で同じルールを繰り返し教え、失敗しにくい環境を整えるほうが、結果的に早く身につきます。
柴犬の性格としつけのポイント
柴犬は日本原産の小型犬で、もともと山野で猟犬として活躍してきた歴史があります。そのため、次のような傾向を持つことが多い犬種です。
- 警戒心が強く、知らない人や場所に慎重になりやすい
- 自立心があり、「自分で考えて動く」のが得意
- 家族には甘えん坊だけれど、どこかクールな一面もある
その一方で、次のような様子が見られることもあります。
- 抱っこやベタベタしたスキンシップがあまり得意ではない
- 一度イヤな印象を持った相手や出来事を、根に持ちやすい
- 指示に対して「それ、やる必要ある?」と様子を見るような反応をする
こうした性格を知らずに、ラブラドールやトイ・プードルのような「人が大好きで、人の指示が大好き」な犬と同じイメージで接してしまうと、
「言うことを聞かない」「反抗的で扱いづらい」と感じやすくなります。
大事なのは、
「この子はダメな子」ではなく「この子は慎重で、自分で考えるのが好きな柴犬らしい子なんだ」
と受け止めたうえで、
「どう伝えればこの子に届きやすいか」を考える視点です。
子犬〜成犬までのしつけの大まかな目安
しつけには年齢による「進みやすさ」の違いがあります。目安として、次のようにイメージしておくとラクです。
- 生後2〜4カ月ごろ:環境に慣れる・人や音に慣れる・トイレの場所を覚えるタイミング
- 生後4〜8カ月ごろ:反抗期も出やすい時期。呼び戻しや基本コマンドをコツコツ積み重ねる
- 1歳以降:これまでの経験が行動に強く出る時期。新しいルールを教えるには時間がかかるが、決して「もう遅い」わけではない
成犬から迎えた柴犬でも、学習する力は十分あります。
「子犬よりゆっくりペース」「焦らず環境づくりから」というイメージを持っておくと、気持ちがかなりラクになります。
しつけは「科目」ではなく「暮らし」とセットで考える
柴犬のしつけというと「おすわり」「まて」といった科目練習をイメージしがちですが、実際には次の3つの土台の上に成り立っています。
- 生活ルール:トイレ・食事・散歩・寝る場所・留守番など
- コミュニケーション:名前を呼ばれたらこちらを見る、落ち着けば良いことが起こると学ぶ
- 環境づくり:失敗しにくいレイアウト、安全に過ごせる空間
これらの土台の上に「トイレ」「呼び戻し」「基本コマンド」を積み重ねていくイメージで取り組むと、全体像がとても分かりやすくなります。
しつけをスムーズにする環境・道具・家族ルール
しつけの成功は、テクニックよりも事前準備で大きく変わります。道具・環境・家族ルールを整えておくほど、実際のトレーニングで迷いが減り、柴犬も混乱しにくくなります。
最低限そろえたい基本アイテム
まずは、次のような道具を目安にチェックしてみましょう。
| 項目 | 目的 | ポイント | チェックしたい点 |
|---|---|---|---|
| クレート / ケージ | 安心できる居場所・留守番・移動 | 立って向きを変えられる広さ・暗くなりすぎない | 扉のロック・組立の安全性・掃除のしやすさ |
| トイレトレー・シーツ | 室内トイレの習慣づけ | 段差が低く、滑りにくい・はみ出しにくいサイズ | 吸水力・ニオイ対策・交換のしやすさ |
| 首輪 / ハーネスとリード | 散歩・安全確保・迷子防止 | 抜けにくく体に負担の少ない形状 | サイズ調整の幅・金具の強度・装着しやすさ |
| ごほうび用おやつ | 望ましい行動を強化する | 小さくちぎれる・低カロリー・飲み込みやすい | 原材料・アレルギーの有無・1日の総カロリー |
| サークル / ベビーゲート | 立ち入り制限・誤飲や事故の防止 | 倒れにくく隙間が少ない構造 | 設置場所・固定方法・床や壁への傷防止 |
特別に高価なグッズでそろえる必要はありません。
それよりも「安全で、一貫したルールのもとで使えるか」を優先して選ぶと失敗が減ります。
※サイズや安全基準はメーカーによって異なります。購入前に、最新の仕様やレビュー、獣医師・トレーナーの推奨などを公式情報で確認してください。
家族で共有しておきたい生活ルール
道具と同じくらい大切なのが、家族間のルールです。ここがバラバラだと、柴犬は「昨日は良かったのに今日はダメ?」と混乱してしまいます。
- 家の中で入ってほしくない場所(キッチン・階段・子ども部屋など)
- ソファやベッドに乗ってよいかどうか
- ごはん・おやつの時間・回数・担当する人
- 散歩の時間帯・担当する家族
- 叱り方・褒め方のルール(大声を出さない・名前で叱らない など)
おすすめは、簡単なメモにして冷蔵庫などに貼っておくことです。
「守れそうもないルールは最初から作らない」ことも大事なポイントです。
1日のざっくりルーティン例
目安として、子犬〜若い柴犬の1日をこんなイメージで考えてみましょう。
- 朝:トイレ → 軽い散歩 → ごはん → 休憩
- 日中:短い遊び・トレーニング(3〜5分)を数回 → ケージでの休憩
- 夕方〜夜:散歩 → ごはん → 家族とのスキンシップ → 静かな環境で就寝
この中に、あとで紹介する「トイレ」「呼び戻し」「基本コマンド」の練習を、
1回3〜5分ずつ、1日に数回差し込んでいくイメージです。
トイレ・呼び戻し・基本コマンドの教え方
ここからは、日常生活の中でも特に重要な「トイレ」「呼び戻し」「基本コマンド」の教え方を具体的に見ていきます。
共通のコツは、
・短時間で終わらせる ・成功した瞬間を逃さず褒める ・できない日は無理しない
の3つです。
トイレトレーニングのステップ
トイレの失敗は、飼い主さんのストレスが大きくなりやすいポイントです。
柴犬のトイレトレーニングでは、「失敗を叱る」のではなく、
「成功しやすいタイミングでトイレに連れて行く」ことが基本になります。
目安となる流れは次の通りです。
- 寝起き・食後・遊んだあと・水を飲んだあとなど、排泄しやすいタイミングをメモする
- そのタイミングでさりげなくトイレに誘導し、静かに見守る
- トイレで排泄できたら、その場ですぐにたっぷり褒めておやつを与える
- 失敗した場所は無言で片づけ、ニオイが残らないようにしっかり掃除する
「ここで排泄するといいことがある」と学習させることが、柴犬のトイレしつけ成功の近道です。
叱らずに済むよう、行動の前に先回りするイメージで見守ってあげましょう。
名前を好きにさせる呼び戻し練習
呼び戻しは、安全面でもっとも重要なしつけのひとつです。
特に自立心が強い柴犬は、「名前を呼ばれても来ない」「捕まえようとすると逃げる」といった行動になりやすいので、
子犬のうちからコツコツ練習しておきましょう。
基本のステップは次の通りです。
- 家の中の静かな場所で、近い距離からスタートする
- 楽しそうな声で名前を呼び、こちらを向いたり近づいてきたらごほうびをあげる
- 「おいで」などの合図を名前のあとに付けて、来られたらさらに褒める
- 名前を呼んで来たあとに、嫌なこと(ケージに入れる・叱る など)をしない
名前を大声で叱るために使ってしまうと、
「名前=嫌なことの前ぶれ」になり、呼んでも来なくなってしまいます。
呼び戻しの成功率を上げるためにも、名前はできるだけポジティブな場面でだけ使うことを意識してみてください。
基本コマンドの教え方と使いどころ
「おすわり」「まて」「ちょうだい(放して)」「やめて」などの基本コマンドは、日常生活の安全とコミュニケーションの土台です。
柴犬は「意味のあること」だと分かるとよく覚える一方で、意味が分からないと動きが止まりやすい傾向があります。
そのため、「生活の中でどう役立つか」をセットで教えていくのがおすすめです。
- おすわり:ごはん前・散歩前・玄関で落ち着いて待ってほしい時に
- まて:扉を開ける時・車から降りる時などの飛び出し防止に
- ちょうだい(放して):誤飲しそうな物をくわえた時・おもちゃ遊びの切り替えに
- やめて:テーブルに飛びつく・かじってほしくない物を噛んだ時の制止に
教えるときは、次の流れを意識してみてください。
- 教えたい行動をひとつに絞り、その行動ができた瞬間をイメージする
- おやつやおもちゃで誘導し、できた瞬間に合図の言葉とごほうびを与える
- 成功率が上がってきたら、ごほうびをランダムにしていく(毎回→ときどき)
- 散歩前やごはん前など、柴犬にとってうれしい出来事とセットで使っていく
コマンドは、「できたら得をする」「落ち着くといいことがある」という経験とセットで教えていくと、柴犬も前向きに学びやすくなります。
練習を進めるか戻すか迷ったときの判断軸
日々トレーニングを続けていると、「これ以上続けて大丈夫?」「もう少しレベルを上げていい?」と迷う場面が出てきます。
そんなときは、次の3つの「物差し」をチェックしてみてください。
| 判断軸 | 見るポイント | 調整の方向性 |
|---|---|---|
| 柴犬の表情・体の動き | 尻尾の位置・耳の向き・舌なめずり・あくび・体のこわばり | 緊張やストレスサインが出ていれば、難易度を下げる・休憩を入れる |
| 成功率 | 10回中7回以上できているか | 7割未満ならステップを細かく分ける・環境をシンプルにする |
| ごほうびへの反応 | おやつや声かけに喜んでいるか・集中しているか | 反応が薄いときは、ごほうびの種類や量、タイミングを見直す |
迷ったときは、
「ひとつ前のステップに戻る」「時間を短くする」「環境を静かにする」
のいずれかを試してみると、スムーズに立て直せることが多いです。
※具体的なトレーニング方法は専門家や書籍によって細部が異なります。迷った場合や不安がある場合は、地域のドッグトレーナーや動物病院などの公式な情報源で、最新の方法を確認してください。
よくあるつまずきとNG行動の対処法
柴犬のしつけでつまずきやすいのは、「叱り方」「一貫性のなさ」「焦り」です。
よくあるパターンを知っておくだけでも、トラブルを未然に防ぎやすくなります。
やりがちなNG行動と、代わりにできること
| よくある行動 | なぜNGになりやすいか | 代わりにしたい対応 |
|---|---|---|
| 名前を大声で叱る | 名前=嫌なことの合図になり、呼んでも来なくなる | 低い声で短く「ダメ」などと伝え、名前は褒めるときだけ使う |
| 失敗したトイレに鼻を押しつける | 何を叱られているか理解できず、トイレ自体を怖がる | 静かに片づけ、次にしそうなタイミングでトイレに誘導する |
| 噛んだときに手を大きく振り払う | 遊びと勘違いしたり、逆に興奮が高まる | 動きを止めて無言で離れ、噛んでも遊びが続かないと学ばせる |
| 日によってルールを変える | 何が正しいのか分からず、行動が安定しない | 家族でルールを共有し、守れないルールは最初から作らない |
- 「ダメ」と伝えるときは短く・低い声で・1回だけにする
- 危険な行動(誤飲・道路への飛び出しなど)は、まず物理的に止める
- 問題行動の前後に、退屈やストレスのサインがなかったか振り返る
- うまくいかないときは、必ず「環境」と「人の対応」から見直す
噛みつき・吠え・引っ張りなど困りごと別のヒント
-
甘噛みがひどいとき
その場で手を引かずに動きを止め、無言で離れて遊びを中断します。噛まずに遊べたときにだけ、たっぷりと褒めて続けましょう。 -
インターホン吠えが気になるとき
音に慣らす練習と、「おすわり・まて」と組み合わせてトレーニングします。
吠え止んだ瞬間を逃さず褒めることで、「静かにすると良いことがある」と学習しやすくなります。 -
散歩で引っ張るとき
引っ張った方向に進まず、リードが緩んだ瞬間にだけ前に進みます。
「引っ張っても進まない」「落ち着いて歩くと進める」という経験を繰り返すのがポイントです。
いずれも共通するのは、
「やめてほしい行動」ではなく「してほしい行動」にごほうびをあげるという考え方です。
飼い主さんがしんどくなったときのリセット方法
思うようにいかない日が続くと、「私の接し方が悪いのかな…」「この子とは合わないのかも」と落ち込んでしまうこともあります。
そんなときは、次のようなリセットを試してみてください。
- 完璧なトレーニングは一旦お休みし、「一緒にゆっくり散歩するだけ」の日を作る
- できていないことではなく、「前より確実にできるようになったこと」を3つ書き出す
- 困っていることを紙に書き出し、「自分だけで頑張る」から「専門家に相談する」に視点を変えてみる
噛みつきや強い攻撃行動など、安全に関わる問題がある場合は、自己判断せず早めに専門家へ相談し、地域のルールや最新の対応方法を確認してください。
今日から始められる3つの習慣
最後に、しつけの進み具合をグッと良くしてくれる「簡単だけど効果の大きい習慣」を3つ紹介します。
-
毎日1つだけ「今日のテーマ」を決める
今日はトイレ、明日は呼び戻し…とあれもこれもやろうとすると、お互いに疲れてしまいます。
「今日は呼び戻しを3回練習」「今日は玄関でのおすわりだけ」とテーマをひとつに絞ると、集中して取り組めます。 -
できた瞬間を10秒だけ振り返る
「さっきの呼び戻し、何が良かったんだろう?」と、ほんの10秒でいいので振り返る習慣を付けてみましょう。
自分の声のトーン・タイミング・ごほうびの出し方など、小さな発見が増えていきます。 -
1日の終わりに「良かったところ」を3つ書き出す
しつけは長期戦です。うまくいかなかった場面だけが記憶に残りがちですが、
「今日は名前を呼んだら1回は来てくれた」「トイレの成功率が昨日より上がった」など、良かったところを文字にすると前向きな気持ちを保ちやすくなります。
こうした小さな習慣の積み重ねが、柴犬との信頼関係やしつけの進みやすさを大きく変えていきます。
柴犬のしつけQ&A
ここでは、柴犬のしつけについて特によくある疑問を、コンパクトにまとめました。気になるものからチェックしてみてください。
Q. 柴犬のしつけは何カ月から始めればいいですか?
A. 基本的な生活ルール(トイレ・噛んでほしくない物の管理・クレートに慣らす など)は、家に迎えたその日から始められます。
ただし、体調やワクチンのスケジュールを優先しながら、無理のない範囲で少しずつ進めていきましょう。
Q. 成犬になってからでも、柴犬のしつけは間に合いますか?
A. 成犬からでも学習は十分可能です。これまでの経験やクセが影響するため、子犬より時間がかかることはありますが、「もう遅い」ということはありません。
環境づくりと一貫したルールを意識し、焦らずコツコツ続けていきましょう。
Q. どうしても噛みぐせが直らない場合はどうしたらいいですか?
A. 遊びの延長での甘噛みなのか、怖さやストレスからの噛みつきなのかによって対応が変わります。
流血を伴う、家族が本気で怖いと感じるなどのケースでは、自己判断せず早めに専門のトレーナーや獣医師に相談してください。
Q. 共働きで留守番が長い場合、しつけは難しくなりますか?
A. 留守番が長くても、安全な環境づくりと限られた時間での質の高いコミュニケーションができれば、しつけは十分に進められます。
誤飲しそうな物を片づける・サークルやクレートで安全に過ごせるようにしておく・帰宅後は短時間でもしっかり向き合う、などを意識してみてください。
Q. 他の犬と比べて「うちの子だけできていない」と落ち込んでしまいます。
A. しつけの進み具合には、犬種だけでなく個体差やこれまでの経験も大きく影響します。
SNSや公園でたまたま目にした「できている子」と比べるのではなく、昨日の自分たちと比べてどうかを物差しにしてみてください。
柴犬との暮らしは、うまくいかない日も含めて、長く続く物語のようなものです。
この記事が、飼い主さんと愛犬がお互いをもっと理解し合うきっかけになればうれしいです。



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