柴犬のしつけが難しく感じるのは、あなたのやり方が間違っているからではありません。柴犬は「自立心」「警戒心」「学習の賢さ」をあわせ持つ、いわば“納得すると最強・納得しないと動かない”タイプです。
この記事では、昔ながらの根性論ではなく、柴犬の性格に合う現代式(褒める・環境を整える・小分けで練習)で、トイレ・甘噛み・吠え・散歩の引っ張り・留守番まで、日常の悩みを一気に解決できるように「手順」「声かけ」「失敗の戻し方」まで具体的に深掘りして解説します。
まず全体像をつかむ:柴犬のしつけは「性格理解」がスタートライン

柴犬のしつけを成功させる土台は、結局のところ次の3本柱に集約されます。
- 性格理解:柴犬は「納得」と「信頼」で伸びる
- 家庭内ルール:一貫性があるほど学習が早い
- 練習の設計:短時間×高頻度×成功体験の積み上げ
柴犬は日本原産の小型の猟犬で、自立心が強く、警戒心が高く、状況判断が上手い傾向があります。ここが「賢いのに言うことを聞かない」と感じる理由です。逆に言えば、飼い主が納得できる条件(メリットがある・怖くない・意味が分かる)を整えれば、学習は驚くほどスムーズに進みます。
しつけには「◯歳までに終わる」というゴールはありません。子犬期・成犬期・シニア期で内容を調整しながら、一生アップデートしていく共同プロジェクトです。焦りや不安が出たら、「2週間で小さな変化があれば十分」とペースを戻しましょう。
準備しておきたいこと:環境・家族ルール・情報源を整える

柴犬のしつけがうまくいく家庭ほど、実は「練習」より先に環境とルールを整えています。理由はシンプルで、犬は起きやすい行動を繰り返すから。つまり、問題行動は「性格」だけでなく「起きやすい仕組み」で増えます。
安全と予防を優先したレイアウト
子犬期は誤飲・転倒・コードかじりが一気に増えます。まずは「危険をゼロに近づける」ほど、叱る回数が減り、信頼関係が壊れません。
- サークル/クレート:安心できる基地。留守番・来客・興奮時のクールダウンに必須
- トイレ環境:同じ場所・同じ素材・同じ導線(途中にラグや段差があると失敗が増える)
- 床対策:滑る床は足腰の負担+落ち着き低下につながる(マットやカーペットで改善)
- 噛んでいい物:誤飲しにくい丈夫な玩具を複数(“噛みたい”を満たせると甘噛みが減りやすい)
家族ルールを統一する:一貫性が学習速度を決める
柴犬は状況判断が上手いぶん、「この人には通る」「この時はOK」をすぐ学びます。家族で対応がズレると、犬は混乱するのではなく、都合のいい方を選ぶようになります(それが“言うことを聞かない”の正体)。
| 決めること | 例 | ズレやすい落とし穴 |
|---|---|---|
| 禁止ゾーン | 寝室・キッチンは入らない | 1回でも入れると「入っていい」学習になる |
| 要求吠えの対応 | 吠えたら要求は叶えない | 一度でも食べ物をあげると“吠えが強化”される |
| 甘噛みの止め方 | 噛んだら即終了→無言で離れる | 手を引くと追いかけ噛みが強化されやすい |
| 散歩ルール | 引っ張ったら止まる/戻す | 急いでいる時に引っ張りで進むと強化される |
信頼できる情報源を確保する:行き詰まりを防ぐ保険
柴犬は思春期(目安:生後6か月〜1歳半頃)に、警戒心・自己主張が強く出て「急に反抗的になった」と感じることがあります。これは珍しくありません。ただし、放置するとクセとして固定化しやすいので、困った時に相談できる窓口を用意しておくと安心です。
- 獣医師・専門家監修のしつけ書籍
- 地域のパピークラス/しつけ教室(見学や体験があるとベスト)
- オンライン行動相談(動画で状況を見てもらえると改善が早い)
制度や料金、開催状況は地域によって異なるため、最新情報は各施設の公式案内で確認してください。
最短で成果が出る設計:柴犬が“やる気になる”褒め方とごほうびの作り方
柴犬のしつけが伸びる家庭は、コマンドの数よりも褒め方の精度が高いです。ポイントは次の3つ。
- タイミング:正しい行動の“直後0.5秒以内”に褒める
- 報酬の価値:その子が本当に嬉しいものを使う(おやつだけじゃない)
- 難易度の調整:成功率が上がる環境に戻す(失敗を繰り返さない)
報酬の種類を3つ持つと、柴犬は伸びやすい
- フード報酬:小さく、すぐ飲み込める(練習が途切れない)
- 遊び報酬:引っ張りっこ・ボール・知育玩具(興奮しすぎる子は短め)
- 生活報酬:散歩に行く・外を嗅ぐ・窓際に行く(柴犬はこれが強いことが多い)
柴犬が反発しやすいNGパターン
- できない時に声が大きくなる/説教が長い(信頼が削れる)
- 成功したのに褒めない(やる意味がなくなる)
- 失敗を見てから叱る(犬には「何が原因か」伝わりにくい)
手順とコツ:柴犬のしつけを崩さず進める3ステップ
柴犬に効くのは、気合ではなく設計です。まずは「生活の基礎」→「基本コマンドと散歩」→「問題行動の分解」の順で進めると、ほぼ迷いません。
生活の基礎を固める:トイレ・ハウス・甘噛み・社会化
お迎え直後〜最初の1〜2か月は、ここが最優先です。これが整うと、後のしつけが一気に楽になります。
基本コマンドと散歩の練習:短時間×高頻度が正義
「おすわり」「まて」「ふせ」より先に、柴犬にとって価値が高いのは呼び戻しです。安全面でも最重要なので、優先順位を上げましょう。
- 呼び戻し:名前→来たら大当たり報酬(普段の3倍嬉しいごほうび)
- 散歩準備:首輪/ハーネスを嫌がらない練習(近づける→褒める→装着→褒める)
- 練習時間:1回3〜5分。1日2〜5回が目安
迷った時は「安全・ストレス・理解度・一貫性」で判断する
| 観点 | 見るポイント | 調整のヒント |
|---|---|---|
| 安全 | 人・犬・物に危険がないか | 危険なら即中断。まず環境から直す |
| ストレス | あくび・舌なめずり・回避・固まる | 難易度を下げ、距離と時間を短くする |
| 理解度 | 成功が3回に1回以上あるか | 分解して“1手前”から教える |
| 一貫性 | 家族で対応が揃っているか | ルールを減らしてでも統一する |
悩み別:柴犬の“あるある問題”を最短で改善する実践レシピ
トイレが安定しない:失敗の原因はだいたい3つ
- 場所が遠い/途中に誘惑がある:まずは成功率が高い位置に戻す
- 褒めのタイミングが遅い:終わった瞬間に褒める(トイレを出てからは遅い)
- ニオイ残り:失敗場所は専用クリーナーで徹底除去(再発を防ぐ)
トイレは「叱って覚えさせる」より、「成功しやすい導線」を作る方が早いです。失敗が続いたら、一段階やさしい環境(範囲を狭く、見張れる状況)に戻すのが正解です。
甘噛みが痛い:柴犬は“遊びが強い”だけのことも多い
甘噛みは「やめさせる」より、噛む先を正しく誘導するのが近道です。
- 噛んだら無言で遊び終了→その場を離れる(10〜20秒でOK)
- 戻ったら、噛んでいい玩具を渡して再開
- 興奮が強い日は、知育玩具や噛む玩具でエネルギーを発散
注意点は、手を引いて逃げると追いかけ噛みが強化されやすいこと。淡々と「噛むと楽しいことが終わる」を繰り返すと、習慣が薄れます。
吠えが増えた:吠えの種類を分けると一気に解決が近づく
柴犬の吠えは原因が混ざりやすいので、まずはラベル付けします。
- 要求吠え(かまって/ごはん/散歩):吠えても叶えない。静かになった瞬間に叶える
- 警戒吠え(インターホン/物音):距離を取り、落ち着ける場所へ誘導。吠えが止んだら褒める
- 恐怖吠え(苦手な人や犬):無理に近づけない。距離を確保して“良い印象”を積む
散歩で引っ張る:柴犬は“嗅ぎたい”が強いから、止め方がコツ
引っ張りを直すコツは、「引っ張ったら進めない」を100%の確率で成立させることです。
- 引っ張ったらその場で止まる(進まない)
- リードが緩んだら即スタート(緩むと進める)
- 嗅ぎたい場所は「よし」で解放し、嗅ぐことを報酬にする
「急いでいる日だけ引っ張りで進む」が一番直りません。忙しい日はコースを短くするなど、ルールを守れる設計にしましょう。
留守番が苦手:不安は“慣れ”で減らせるが、順番が大事
- まずはクレート=安心を作る(中で寝られる状態)
- 次に数分の外出を繰り返す(いきなり長時間にしない)
- 帰宅時は大騒ぎしない(落ち着いたら声をかける)
破壊や遠吠え、よだれが多いなど強い不安サインがある場合は、自己流で長引かせず、早めに専門家へ相談するのが結果的に早いです。
よくある失敗の避け方:叱りすぎ・一貫性のなさ・期待しすぎ
感情的に叱るほど、柴犬は“距離を取る”
柴犬は感情の圧に弱く、怒鳴りや体罰は信頼関係を壊しやすいです。問題行動が出たら、まずは次の順番で考えましょう。
- 環境:そもそも起きにくくできないか
- 代替行動:別の行動を教えられないか
- 安全の制止:危険な時だけ短く止める
対応がブレると、柴犬は“学習をやめる”のではなく“選ぶ”
一貫性は正解のスピードを上げます。ルールは多いほど良いのではなく、守れる数に絞るほど強いです。
他の犬と比べない:柴犬は個体差が大きい
同じ月齢でも差が出ます。大切なのは「昨日のうちの子」と比べる視点です。吠えが1回減った、散歩で1回立ち止まれた、そんな小さな改善を拾えると、続ける力になります。
プロに相談したほうがいいサイン:早いほどラクになる
次のようなケースは、自己流で抱え込まず、獣医師や専門家へ相談するのがおすすめです。
- 噛みつきがエスカレートし、人や犬にケガのリスクがある
- 留守番で強いパニック(破壊、遠吠え、嘔吐、よだれ過多など)が続く
- 触られるのを極端に嫌がり、日常ケアが困難
- 急に性格が変わったように見える(痛み・体調不良の可能性)
「しつけ」ではなく「体調」や「恐怖」が原因のこともあるため、見極めが重要です。
まとめ:柴犬のしつけは長く付き合う「共同プロジェクト」
柴犬のしつけは、性格理解→環境づくり→一貫性→成功体験の順で整えると、驚くほどスムーズになります。完璧を目指すよりも、今日できた小さな一歩を積み重ねる方が、結果的に大きな成長につながります。
困ったときは一人で抱え込まず、信頼できる情報源や専門家も上手に使いながら、柴犬との暮らしを楽しんでいきましょう。
最終更新:2025-12-14
FAQ:柴犬のしつけでよくある質問
- Q.柴犬のしつけはいつから始めるべき?
A.迎えたその日から始められます。まずは生活リズム、トイレ、ハウス(安心できる場所)づくりから。体調やワクチン状況に合わせて少しずつステップアップしましょう。 - Q.成犬になってからでも間に合う?
A.はい、成犬でも学習できます。ただし過去の経験や習慣が影響するため、子犬より時間がかかることも。環境調整と“成功体験の積み上げ”を丁寧に続けるのが近道です。 - Q.吠えや噛みつきがひどいときは?
A.まず安全確保が最優先です。原因(恐怖・要求・退屈・痛みなど)を切り分け、難しい場合は早めに獣医師やトレーナーへ。強い不安や攻撃性が疑われる時ほど、早い相談が改善を早めます。 - Q.しつけ教室は利用したほうがいい?
A.初めての方や不安がある方には特におすすめです。実際の様子を見て調整してもらえるため、自己流より短期間で改善の糸口が見つかることが多いです。見学や体験で愛犬に合うか確認しましょう。



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