柴犬のしつけは、「コマンドを覚えさせる」前に暮らしの土台を整えるほど、驚くほどラクになります。なぜなら柴犬は、賢く自立心が強いぶん「納得しないと動かない」面があり、テクニックで押し切ろうとすると反発しやすいからです。
この記事では、初心者でも再現しやすいように「環境づくり → ほめ方 → 一貫性」を軸に、具体的な手順・よくある失敗・困りごとの対処まで深掘りしてまとめました。目指すのは“完璧なしつけ”ではなく、柴犬と暮らしやすい毎日です。
まず全体像をつかむ|柴犬のしつけは「暮らし方」を整えるほど成功する

柴犬のしつけで最初に意識したいのは、「細かいルールを教えること」よりも暮らし方の設計です。暮らしの設計ができていると、犬は毎日同じパターンで安心でき、結果として落ち着きやすく、困りごとも減ります。
柴犬は「賢い=すぐ覚える」だけではありません。賢いからこそ、人間の矛盾やルールのゆらぎもすぐ見抜きます。ここが初心者がつまずきやすいポイントです。
まず押さえるべき全体像は、次の3本柱です。
- 生活リズムと環境を整える(トイレ・寝床・遊び・散歩の時間)
- 「してほしい行動」を増やす(ほめる・ごほうびの使い方)
- 家族でルールをそろえる(一貫性=柴犬への最大の優しさ)
柴犬が落ち着く家のルールは「増やす」から作る
「ソファに乗ってほしくない」のような“やめさせたい行動”は、叱るほど逆効果になりがちです。柴犬には特に、叱りが刺激になって興奮したり、飼い主を避けたりする子もいます。
コツは、代わりにしてほしい行動を用意して、それを増やすこと。
最初に整えるべき「1日の型」テンプレ
柴犬は“先が読める生活”で落ち着きます。まずは、次のような型を作ってみてください(完璧でなくてOK)。
- 起床 → トイレ誘導 → 朝ごはん → 少し遊ぶ
- 日中:寝る場所を固定(静かな場所・刺激少なめ)
- 夕方:散歩(エネルギー発散)→ 帰宅後トイレ → 休憩
- 夜:短い練習(3〜5分)→ 落ち着く時間 → 就寝
しつけは「一気に完璧」より、2週間単位でテーマを決めると続きます。最初の2週間はトイレ、次の2週間はハウス…というように、焦らず積み上げましょう。
準備しておきたいこと|道具は“しつけの武器”ではなく生活インフラ

しつけの成功は、準備で半分決まります。大事なのは「道具を買う」こと自体ではなく、柴犬が迷わない環境を先に用意することです。
| 項目 | 目的 | ポイント |
|---|---|---|
| クレート/ケージ | 安心できる寝床・お留守番 | 「閉じ込める箱」ではなく“安心基地”。中に毛布・匂いのついた布で落ち着く |
| トイレトレー・シーツ | 室内トイレの習慣づけ | 最初は広く成功率を上げる → 安定したら少しずつ適正サイズへ |
| 首輪/ハーネス・リード | 散歩・安全確保 | 抜けにくいフィット感。外に出る前に室内で“装着練習” |
| ごほうび用おやつ | ほめるタイミングで使う | 小さくちぎれる・低カロリー。1日の量を決め、食事から差し引く |
| 噛んでよいおもちゃ | ストレス発散・いたずら防止 | 「噛んでOK」を明確に。誤飲しないサイズ・壊れたら即交換 |
家族ルールは「紙に書ける」まで具体化する
柴犬が混乱する最大原因は、家族の対応のバラつきです。「ダメ」「かわいそう」「ちょっとだけ…」が混ざると、柴犬は学習できません。
- 入ってよい場所/ダメな場所(玄関・寝室・ソファなど)
- 人に飛びついたらどうするか(無視→4足が床→ほめる、など)
- 甘噛みが出たらどうするか(手を引く/おもちゃへ誘導、など)
- 「ほめ言葉」を統一(例:いい子・ナイス・そうそう のどれか)
チェック:家族のルールが「短い文章で」書ければOKです。例:「ソファは乗らせない。乗ったら黙って床へ誘導し、ベッドに行けたらほめる」
※道具の安全基準やサイズは成長や体格で変わります。購入前後にメーカー公式のサイズ表を確認し、子犬期はこまめに見直してください。
手順とコツ|初心者でも迷わない「3ステップ」実践ロードマップ
柴犬のしつけは、小さな成功を積み重ねるほど伸びます。逆に「できない所を直す」ばかりだと、人も犬も疲れます。
まずは、土台となる順番を押さえましょう。
- 生活の土台:トイレ/ハウス/名前/呼び戻し(来て)
- 困りごと対処:甘噛み/吠え/拾い食い/引っ張り など
- 散歩マナー・芸:おすわり/まて/ふせ は短時間で楽しく
3ステップ:集める → 試す → 固める
- 集める
「理想の行動」と「教え方」を確認します。柴犬は飽きやすい子もいるので、長時間より短時間で終える前提で考えると失敗しにくいです。 - 試す
同じ課題でも方法は複数あります。1〜2週間は同じやり方で試し、反応を見て微調整。迷ったら獣医師・トレーナーへ相談してOKです。 - 固める
うまくいく型が見えたら、家族全員で“完全に同じ手順”にします。柴犬は一貫性があるほど安心して覚えます。
ほめ方は「1〜2秒」が勝負|柴犬に伝わるタイミング設計
- できた直後1〜2秒以内にほめる(遅れると別行動をほめてしまう)
- 最初は毎回ごほうび → 慣れたらランダムに(“たまに出る”が強い)
- 練習は3〜5分×1日数回(柴犬はダラダラが苦手)
- 終わりは成功で締める(「できた!」で終えると次回やる気が残る)
最優先で教えるべき2つ|トイレとハウスは“生活の安全装置”
トイレとハウス(クレート)は、芸ではなく生活の安全装置です。これができると、留守番・来客・災害時・通院が格段にラクになります。
トイレの基本は「成功の確率を上げる」こと。
- 成功しやすいタイミングで誘導(寝起き/食後/遊んだ後)
- 成功したら“静かに大喜び”で即ほめる
- 失敗は叱らない。黙って片づけ、次の成功を増やす
- 失敗が多いなら「広くする」「目を離す時間を減らす」が先
ハウスの基本は「入れたら終わり」ではなく「入ると落ち着く」を作ること。
- 中に入ったらごほうび → 出ても追いかけない
- 最初は扉を閉めない(“閉じ込められた”を避ける)
- 中で噛めるおもちゃを渡す(落ち着く習慣がつく)
よくある失敗の避け方|叱る前に“3つのメモ”で原因が見える
柴犬のしつけでつまずく原因は、「方法」より続け方のズレにあることが多いです。感情で対応するとブレやすいので、うまくいかない時ほど“メモ”が効きます。
- 叱りすぎて、手や人を怖がるようになる
- 家族で対応が違い、柴犬が混乱する
- 数日で結果を求め、「うちの子は無理」と諦める
- 困った行動の原因(運動不足・不安・体調)を見落とす
| 視点 | メモすること | 見直しのヒント |
|---|---|---|
| 頻度 | 1日に何回起きた? | 回数が減っていれば改善中。ゼロを急がない |
| 状況 | いつ・どこ・誰の時? | 特定の場面だけなら環境調整で改善しやすい |
| 感情 | 不安?興奮?眠い? | 怖がっているなら方法を“優しく・簡単に”するサイン |
避けたいNG:失敗した場所に鼻を押しつける/大声で叱る/長時間閉じ込める。恐怖が残り、逆に不安や問題行動が増えやすくなります。片づけは淡々と、成功を増やす方向へ切り替えましょう。
「吠え」「噛み」「引っ張り」が増えたら、まず疑う3つ
困った行動が増えたとき、しつけ不足と決めつける前に、次の3つを点検してください。ここが整うだけで一気に落ち着く子も多いです。
- 運動不足:散歩が短い/刺激が少ない(同じ道ばかり)
- 睡眠不足:家の刺激が多く休めていない(テレビ・来客・子どもの声)
- 不安の蓄積:留守番・音・来客など苦手が続いている
柴犬は我慢強そうに見えて、実は“限界が来ると一気に爆発”する子もいます。行動が急に変わったときや、攻撃性が強まったときは、健康面も含めて専門家へ相談してください。
※しつけ方法は犬の性格・月齢・健康状態で合う合わないがあります。極端な攻撃行動、急な変化、体調不良が疑われる場合は自己判断せず獣医師や専門トレーナーへ相談してください。
初心者が伸びる“練習の型”|毎日10分で信頼関係が積み上がる
柴犬のしつけは、長時間の特訓よりも短い成功の積み重ねが向いています。おすすめは「合計10分を分割」するやり方です。
- 朝:1〜2分(名前→来たらほめる)
- 夕方:3〜5分(おすわり/まて を1〜2回成功で終了)
- 夜:2〜3分(ハウスで落ち着く練習)
「今日はうまくいかなかった」と感じても、成功を1回作って終えると、柴犬の学習が前向きな状態で保存されます。終わり方が一番大事です。
まとめ|柴犬のしつけは“環境・ほめ方・一貫性”で8割決まる
柴犬のしつけは、特別なテクニックよりも暮らしの設計が効きます。環境を整え、ほめるタイミングを整え、家族の対応をそろえる。これだけで、初心者でもグッとやりやすくなります。
困りごとが出たときは、叱る前に「頻度・状況・感情」をメモして原因を見える化しましょう。柴犬はマイペースだからこそ、焦らず、短く、成功で終える。これが長くうまくいくコツです。
最終更新:2025-12-13
FAQ|柴犬のしつけでよくある疑問
子犬の柴犬はいつからしつけを始めるべき?
迎えた日から始めてOKです。ただし「芸」よりも、まずはトイレ・ハウス・名前・甘噛み対策など生活の土台から。短時間で終えるほど成功します。
成犬から迎えた柴犬でも、しつけは間に合う?
間に合います。時間はかかることがありますが、成犬は落ち着いて学べる強みもあります。最初は環境とルールを固定し、成功を増やす設計にしてください。
留守番が長い家庭でも、しつけは可能?
可能です。ポイントは「留守番前後の過ごし方」です。出かける前に短い散歩や遊びで落ち着かせ、帰宅後は興奮が落ち着いてから構うと安定しやすいです。ハウス(クレート)を“安心基地”にしておくと強い味方になります。
吠えや噛みつきが強いときは、どこに相談すればいい?
まずはかかりつけの獣医師へ(痛み・病気が隠れていることもあります)。しつけ面は、経験のあるドッグトレーナーや、自治体・動物病院のしつけ相談を利用するとスムーズです。



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