「吠える・噛む・呼んでも来ない…。でも叱るのは可哀想。」
そんな葛藤を抱えながら、柴犬のしつけに悩んでいませんか?
柴犬は賢くて自立心が強いぶん、一気に厳しく教え込むよりも、「小さく・コツコツ」積み重ねるタイプです。
この記事では、忙しい飼い主さんでも続けやすいように、
- しつけをラクにする「3本柱」
- 始める前に整えておきたい環境とルール
- 今日から試せる「1週間の練習プラン」
- つまずきやすいポイントとリセットのコツ
をまとめて解説します。
専門書を読み込んだり、難しいテクニックを覚える前に、まずはこの1記事をロードマップ代わりにしてみてください。
柴犬のしつけを簡単にする3本柱
最初から「全部の問題行動を直そう!」とすると、犬も人もすぐに疲れてしまいます。
そこで、まずは次の3本柱だけを意識しましょう。
- 生活のルール:トイレ・食事・入ってよい場所など
- 人と犬との関係づくり:名前を呼んだら見る、触られることに慣れる など
- 基本コマンド:おすわり・まて・おいで・ハウス など
1. 生活のルールを決める
生活のルールは、いわば「柴犬との暮らしの交通ルール」です。例えば、
- トイレはどこでしてほしい?
- 食事の時間はいつ?
- ソファやベッドは乗っていい?ダメ?
- キッチンや寝室など、立ち入り禁止エリアは?
ここが曖昧なままだと、しつけを頑張っても、
「今日は怒られたけど、昨日は怒られなかった…」と、柴犬を混乱させてしまいます。
2. 関係づくり:信頼してもらう小さな積み重ね
柴犬は、「この人は安心できる」「この人のそばにいるといいことが起きる」と感じた相手には、とてもよく応えてくれます。
そのために、まずは次のような超シンプルな目標から始めましょう。
- 名前を呼んだら、1〜2秒こちらを見る
- 体や足先を少しずつ触られることに慣れる
- 呼ばれたら、近くまで来る
これらはすべて、あとから出てくる「吠え」「噛み」「散歩の引っ張り」などの対策にもつながる、大切な土台になります。
3. 基本コマンドは「生活で使うもの」だけでOK
最初からたくさん教えなくて大丈夫です。初心者さんは、まず以下の5つだけに絞るとスムーズです。
- 名前:こちらを「見る」合図
- おすわり:興奮を落ち着かせる基本姿勢
- まて:飛び出しや誤食の予防
- おいで:離れた場所から呼び戻す
- ハウス:クレートやサークルに入る合図
どのコマンドも、「成功した瞬間にほめる → 小さな成功を積み重ねる」のがポイントです。
しつけ前に整えておきたい3つの準備
実際のトレーニングに入る前に、道具・家族のルール・時間の枠を整えておくと、あとがグッとラクになります。
① 最低限そろえたい道具リスト
特別なグッズは必要ありませんが、次のようなものがあるとスムーズです。サイズや安全性は商品ごとに違うため、購入前に公式サイトや最新情報を確認してください。
| カテゴリ | 目的 | 選ぶときのポイント |
|---|---|---|
| クレート/サークル | 安心できる部屋・留守番・移動 | 立って向きを変えられる広さで、逃げ出しにくい構造 |
| リード・首輪/ハーネス | 散歩・安全確保・トレーニング | 抜けにくくサイズ調整できるもの。柴犬は首回りがしっかりしているのでフィット感重視 |
| ごほうび用おやつ | 望ましい行動をほめて強化 | 小さくちぎれる・低カロリー・においがよくて食いつきの良いもの |
| トイレトレー・シーツ | トイレの場所を分かりやすくする | 最初は広めに設置し、成功しやすい環境づくりを意識する |
| おもちゃ | 噛みたい欲求やストレスの発散 | 誤飲しにくい大きさ・固さ。ロープ系・ゴム系など数種類あると便利 |
※道具の安全基準や表示はメーカー・地域で異なります。必ず最新情報を公式で確認してください。
② 家族で「しつけルール」を統一する
柴犬は、人によって対応が違うと、すぐにそれを学習してしまいます。
- 「この人には吠えれば通る」
- 「この人には飛びついても怒られない」
という「マイルール」を作らせないために、次のような項目を家族全員で事前に話し合ってメモにするのがおすすめです。
- テーブルの食べ物は「絶対にあげない」かどうか
- ソファやベッドに乗ってよいか・ダメか
- 吠えたときの対応(無視する/指示を出す など)
- 散歩やごはんの担当者と時間帯
決めたルールは、冷蔵庫やケージの近くに貼っていつでも見返せるようにしておくと便利です。
③ 1日のしつけ時間の目安を決める
しつけを習慣にするコツは、最初から「頑張りすぎない」こと。
目安としては、
- 1回:5分以内
- 1日合計:15〜20分程度
に収めると、犬も人も負担が少なく続けやすくなります。
例えば、次のように生活の中に組み込むイメージです。
- 朝の散歩前に「おすわり」3〜5分
- 夕方の遊び時間に「おいで」3〜5分
- 寝る前に「名前を呼ぶ→見る」練習を3分
「やる気のある日だけ長くやる」のではなく、毎日少しずつ、同じ時間帯に繰り返すことで定着しやすくなります。
今日からできる!1週間の簡単しつけプラン
ここからは、初心者さん向けの「1週間お試しプラン」を紹介します。
すべてを完璧にこなす必要はありません。
「昨日より少しできたら花丸」くらいの気持ちで進めてみてください。
| 日数 | テーマ | 内容の目安(1日合計15〜20分以内) |
|---|---|---|
| 1日目 | 名前を覚えてもらう | 名前を呼ぶ → こちらを見る → すぐほめる/おやつ。1回3分×3セット。 |
| 2日目 | 「おすわり」の導入 | おやつを鼻先から頭の上へ動かし、お尻が床についた瞬間「おすわり」と声掛け。3〜5分×3セット。 |
| 3日目 | 「おすわり」の安定 | 場所を変えながら同じ練習。できた回数を数えて「今日は10回成功!」など目に見える形で楽しむ。 |
| 4日目 | 短い「まて」 | おすわり → 1秒だけ待たせてから「よし」と解除。成功したらすぐほめる。1〜2秒から始めて少しずつ伸ばす。 |
| 5日目 | 「おいで」の導入 | 近い距離から「おいで」と呼び、来てくれたら大げさにほめる。失敗しないくらい短い距離からスタート。 |
| 6日目 | 「ハウス」の練習 | おやつやおもちゃでクレートに誘導し、中に入った瞬間に「ハウス」と声掛け。扉は最初は閉めなくてOK。 |
| 7日目 | 復習&ほめる日 | できたことだけを短く復習し、とにかくたくさんほめる日。「よく頑張ったね」とお互いをねぎらう。 |
この1週間を終えたら、「いちばんうまくいったこと」「難しかったこと」をメモしておくと、次に何を優先するか決めやすくなります。
うまくいかないときによくある3つの落とし穴
「ちゃんとやっているはずなのに、うまくいかない…」と感じるときは、柴犬の性格というより人側のパターンが原因になっていることも多いです。
落とし穴1:叱りすぎ・感情的になりすぎ
柴犬はプライドが高く、強く叱られると、
- 呼んでも来ない
- 触らせてくれない
- 抱っこやブラッシングを嫌がる
といった、別の問題につながることがあります。
叱る場面を減らすためのポイントは次の通りです。
- 名前を呼ぶときは怒鳴らない(名前=良いことの合図にする)
- 噛んだ・吠えたときは、まず距離をとる・視線を外すなどで興奮を下げる
- 本当に危険なときだけ、短く低い声で「ダメ」などを伝える
落とし穴2:ルールが日によって変わる
昨日はソファに乗っても怒られなかったのに、今日は怒られた…。
こんな日が続くと、犬は「何が正解なのか分からないストレス」をためてしまいます。
ありがちなNG例は、
- 「今日は特別ね」とテーブルのごはんをあげてしまう
- 忙しい日が続いて散歩が極端に短くなる
- 家族によって「ダメ」と言う人と、何も言わない人がいる
一度決めたルールは、「例外を作りにくいシンプルな形」にしておくと守りやすくなります。
落とし穴3:早く結果を求めすぎる
トイレ・吠え・噛みつきなどは、数日で劇的に変わることは少ないです。
多くの場合、
- 良くなったり悪くなったりを繰り返しながら
- 少しずつ安定していく
というカーブを描きます。
一時的に失敗が増えても、「そういう時期もある」と知っておくだけで、気持ちがラクになります。
うまくいかない日は、早めに切り上げて、「今日はここまで、明日また頑張ろう」くらいにしておきましょう。
見直し用チェックリスト
壁にぶつかったときは、次のチェックリストを見直してみてください。
冷蔵庫やケージの近くに貼っておくと便利です。
- 叱る回数より、ほめる回数の方が多いか
- 家族全員が同じルールで接しているか
- 1回の練習時間が5分以内に収まっているか
- 犬が落ち着ける「安全地帯(クレートなど)」が用意されているか
- できないことより「できたこと」に目を向けているか
共働き家庭・成犬から迎えた柴犬の場合
「うちは留守番が長いから無理かも…」「成犬で迎えたから、もう遅いのかな?」という相談もよくあります。ここでは、状況別のポイントを簡単にまとめます。
共働きで留守番が多い家庭のポイント
- 短時間・高密度の「ほめる時間」を意識する
- 朝と夜のルーティンにしつけを組み込み、内容を絞る
- おもちゃや知育玩具を活用して、留守番中の退屈・ストレスを減らす
- どうしても難しい場合は、一時預かりやトレーニングサービスの利用も検討する
成犬から迎えた柴犬のポイント
- 子犬と比べて覚えるのに時間がかかるだけで、成犬でも十分に学習できる
- それまでの経験が分からない場合は、無理に触ったり抱っこしたりせず、距離感を大切に
- トイレやハウスなどは「今できていること」を観察し、そこから少しずつ修正していく
- 噛みつきや強い恐怖反応がある場合は、自己判断せず専門家へ相談する
子犬でも成犬でも、「怖がらせない」「成功をほめる」という基本は共通です。
柴犬のしつけを簡単にするためのまとめ
柴犬のしつけをラクにするポイントを、最後にもう一度整理します。
- 性格の特徴(賢い・自立心が強い・マイペース)を理解する
- 生活のルール・関係づくり・基本コマンドの3本柱に絞る
- 道具と環境、家族のルールを整えてから始める
- 1日15〜20分、1回5分以内で「短く・楽しく」続ける
- うまくいかないときは、叱るよりほめる回数・ルールの一貫性・練習時間を見直す
完璧を目指す必要はありません。
「昨日より少しできた」「今日は落ち着いて過ごせた」といった、ささやかな変化を一緒に喜びながら、柴犬との暮らしを育てていきましょう。
より深く学びたい場合は、
- 子犬期の接し方
- 散歩トレーニングのコツ
- 吠え・噛みつき対策
といった関連テーマもあわせて確認すると、毎日のコミュニケーションがもっと楽になります。
※本記事は一般的な飼育・しつけに関する情報をもとにした解説です。
個々の犬の性格や健康状態によって適切な方法は異なります。
心配な症状や強い問題行動がある場合は、獣医師やドッグトレーナーなど専門家に相談し、最新情報は公的機関・公式サイトで確認してください。
柴犬のしつけに関するFAQ
最後に、柴犬のしつけでよくある疑問をQ&A形式でまとめます。
Q. 柴犬のしつけは何歳から始めればいいですか?
A. 家に迎えたその日から始められます。
ただし子犬期は体力・集中力が短いため、
- トイレの場所
- 食事の時間
- 寝る場所
といった生活ルールづくりと、1回数分の短い練習からスタートするとスムーズです。
成犬になってからでも、時間をかければしっかり学習してくれます。
Q. 叱らないと覚えないのでは?
A. 柴犬は「叱られてやる」よりも「自分にとって得になるからやる」タイプが多い犬種です。危険を避ける場面以外は、
- 望ましい行動をほめて増やす
- 失敗しにくい環境を整える
といった方法の方が、結果的に早く覚えます。
Q. 吠えや噛みつきがひどいときはどうすればいいですか?
A. まずは、
- 来客・物音・他犬など、きっかけになっているもの
- 興奮しやすい時間帯や状況
を観察してメモしてみましょう。
そのうえで、興奮をあおらない環境づくり(見えないようにする・距離をとる など)から始めます。
ケガの危険がある場合や自己判断が難しい場合は、早めに専門家へ相談してください。
Q. 共働きで留守番が多くても、しつけはできますか?
A. できます。ポイントは、
- 朝・夜の決まった時間に、短時間でも「ほめる練習」を入れる
- 留守番中の退屈・ストレスを減らす工夫をする
- 困ったときは預かりサービスやトレーニングサービスの利用も検討する
など、「限られた時間で何を優先するか」を決めることです。
Q. しつけがうまくいっているか不安なとき、何を目安にすればいいですか?
A. 毎日「良かったことを3つメモする」のがおすすめです。
- 今日は名前を呼んだらすぐ見てくれた
- トイレの成功が昨日より1回増えた
- 散歩中に少し落ち着いて歩けた
といった小さな変化を記録しておくと、振り返ったときに「ちゃんと前に進んでいる」と実感しやすくなります。
柴犬とのしつけは、ゴールではなく毎日の対話です。焦らず、楽しみながら積み重ねていきましょう。



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